問答。

サークルにての。
忘れるべきではないので全文転載していただきます。
このような世界の片隅のブログ、自分の為だけの記事にすぎませんが。
ありがとうございました。


僕が問います。
「例えば自分の失態によっても演奏自体は必ずしも絶望的ではないもの、表現としては普段と変わらずやりとげたと、少なくとも自分はそう感じたとして。
しかし他のメンバーが自分が失態したという行為自体に失望や悲しみ(要因と考えられるのはその失態が今までの練習を侮辱している、またその失態を犯す事がバンドに対する懸命さを否定していると感じてしまったことにより)を持ってしまった事に酷く気付いた場合は。
そういった出来事の後にバンドに向き合う事が恐ろしくなったり、継続に罪悪を感じてしまう場合、どうすればいいのでしょうか?」
答えて頂き曰く。
「じゃあ、逆に聞くけど、それが人生や社会・人間関係一般だった場合、きみはどうするの?
とりあえず音楽の場合には、バンド脱退あるいは音楽そのものを辞めてしまう、という一番簡単な逃げ道が用意されているよね。
でも人生にはそういう逃げ道はないでしょ。
おれは自殺には完全に否定的な見解だからね。おれと関わりのある人間が、それを選択肢のひとつと考えるようなことは絶対に許さないよ。
仕事だってそんな簡単に辞められないでしょ。
そういうことがどれだけ馬鹿げてて、つまらないナルシシズムなのかは、昨今きみ自身が気づき始めてることだと思うけど。
そういう間違いを犯してしまえば、誰だってそのあとのことは恐いよ。おれだって、ミスなんか犯してなくても他人と向き合うのは恐い。
だけど、それをしないでどうやって行きて行くの?
おれは誰かとつながっていたい。誰よりもそう思う。だからこそひとと向き合うことが恐い。
きみだってそうじゃないの?少なくともおれにはそう見えるけど。
きみはうさぎの涙でイントロが弾けなかったことを言ってるね?
ほかにもあるのかも知れないけど、あの失敗をして象徴しているのではなかろうか。
あれは最低だったね。
でも最低だったのはイントロが弾けなかったことじゃない。みんなががっかりしたのは弾けなかったこと自体じゃないんじゃないかな。
あのとき、どうしてきみは諦めてしまったの?
あれがきみのやりたいことで、それに賛同して、それを一緒に作り上げて行こうとして集まった仲間じゃなかったの?
ミスはだれでも犯すんだよ。
だけどミスは罪ではない。ミスは意図的なものじゃない。
技術的な未熟も意志だけではどうにもならない。だから一生懸命練習するんだ。
たとえばおれがメンバーだったなら、強引にでもインして、きみの演奏をイントロとして形式だけでも意味あるものに出来たろう。未熟だったのはきみだけじゃない。だから許し合って一緒にやらなきゃならない。
だけど、諦めることは意志だ。意図的なものだ。
もしメンバーが侮辱されたなどと感じているとしたら、それはきみの失態自体によってではなく、きみが諦めたことによってのはずだ。
きみはあそこで、うまくやれないということ、努力が足りなかったということ、失敗し続ける自分をみんなが見ているということ、そういうことの重圧に絶えかねて、メンバーを裏切ることを決めたんだ。要するにきみがしたことは、ピアノの運搬の最中に突然手を離すことと同じだ。
つまずいて転んだなら誰もきみを責めない。ひとより非力だったとしても誰もそれを責めたりはしない。でもきみは、自分で手を離すことを決めたんだ。
きみがしたのは侮辱なんかじゃない。裏切りだ。
おれが先輩からもらったありがたいことばをそのままきみにも差し上げるとすれば、「きみは甘え過ぎだ」。
こんなにとうとうとおれが語ることなんて、本当は全部分かってるはずじゃないのかな。少なくともきみの日記を読めばおれはそう思う。
きみに決定的に欠けてるのは行為する覚悟だ。
きっときみは遠くを見過ぎだ。だからそこまでの途方もない道程に気が遠くなってしまうのではないのか。一度もっと足元を見てみたらどうだろう。一番小さなことから初めてみてはどうか。
まずはその罪悪感ときみが呼ぶものを取り除かなくてはならない。そのために、一度メンバーと集まってきちんと話し合いをしないといけない。きみの罪悪はメンバーに対する裏切りなのだから、それをきちんと謝罪しなければならない。
そして、もう二度と裏切らないことを誓って、そのための努力をしなければならない。
メンバーが許してくれずにバンドを脱退するなら仕方ない。
でも、個人的にはきみが自分からバンドを解散することはしてはならないと思う。
それは責任を取ることにはならない。
きみがしたことをきみ自身が誰よりも重く受け止めて、それを償う努力を見せ続ける以外に、いままで一緒に演奏してくれて、今後も一緒にいてくれる(かも知れない)ひとたちの気持ちに対してきみが責任を果たす方法はないのではないか。
きみは自分のことをどう思っているのか知らないが、おれはきみのベースラインに対する感覚はかなり的を射ていると思う。
最初のバンドの「枯葉」、後テーマのサビで弾いてたラインなんてとても美しかったけど、たけちゃんやモジャがあんな風に弾いたのを聞いたことはない。
あとは細かい部分を修正して、それが実現出来るように練習するだけだ。
きみにもうひとつ足りないのは、自分の感じたことをきちんとした形でひとに伝えようとする努力だとおれは考えている。
他人は自分が思っているよりはるかに自分に無関心で、自分が思っているよりはるかに自分に関心を持っているよ。
自分と立場を置き換えて考えてみれば分かるのではないだろうか。
そういうことを忘れないでもらいたいです。
頑張って。」


つまり、やる事は既に決まっていると言う事です。